株式会社セガでは、家庭用ゲーム機、PC、およびスマートデバイスに向けたゲーム関連事業を展開しています。2023年度下期には、大人気シリーズの最新作「龍が如く8」「ソニックスーパースターズ」が発売されたほか、グループ会社のアトラスからは「ペルソナ3 リロード」「ユニコーンオーバーロード」が発売され、注目が集まりました。スマートフォンのゲームは、着実な運用を行い、数千万人を超えるユーザーが日々ゲームを楽しめるようにしています。
同社では、2023年4月から「つぶやきデスク」を活用しています。X(旧Twitter)の運用やキャンペーン管理などについて、お話をうかがいました。
ファンのためのコミュニティをSNS上で実現
ジャパンアジアパブリッシング事業本部 マーケティング本部 コミュニティマネジメント部 副部長
南木 翔氏
お二人が所属するコミュニティマネジメント部では、どのような業務を行っていますか?
南木氏:当社ではこれまで、商品やサービスに紐づいたマーケティングを実施してきましたが、コミュニティマネジメント部では、すでに購入、参加経験がある方をファンとみなし、ファンに向けてのマーケティング、あるいはこれからファンになるであろう見込み顧客へのマーケティングを実施しています。
この部署は立ち上げてから3年目になります。これまではプロダクトマーケティングの延長でファンの育成をやっていましたが、会社としてコミュニティとしっかり向き合うという方針になり、それをミッションとしている部署となります。私はその部署のマネジメントをやっています。
藤田氏:部署のメンバーはそれぞれ担当の作品を持っており、コミュニティの起点としてSNSの運用を行っています。中でもXを中心的に使っています。以前から使っていたということもありますが、やはりXにはゲームと親和性の高いユーザーが集まってコミュニティができているからです。
タイトルにもよりますが、Instagram、TikTok、Discordなども活用しています。SNS以外でも、オフラインのイベントの企画などを含めて、ファンへのアプローチの方法を各担当が考えています。
私は、スマートフォンアプリの麻雀ゲーム「セガNET麻雀 MJ」(以下MJ)を担当している他、部署の横のつながりを強めるために、他社の取り組みの紹介やベストプラクティスの共有などをサポート役として担っています。「つぶやきデスク」の導入や使い方のレクチャーなども私が担当しています。
ゲームタイトルごとにアカウントを運用。共通の目的はコミュニティの育成
ジャパンアジアパブリッシング事業本部 マーケティング本部 コミュニティマネジメント部 第1CMチーム
藤田 直子氏
ゲームタイトルごとにアカウントを運用する経緯についてお話ください。
南木氏:セガというブランドを聞いた時に、ある人は昔遊んだゲームを思い浮かべ、またある人は現役で遊んでいるゲームを思い浮かべるなど、人によってイメージが異なります。また、「龍が如く」のような裏社会をテーマにしたゲームもあれば、「ぷよぷよ」のような全年齢対象のゲームもあります。そのため、全部まとめて情報を訴求すると、個別タイトルのファンに情報が届かなかったり、関心の薄い情報まで届いてしまうという課題があります。
そこで、会社の公式アカウントを除いては、ゲームタイトルごとにアカウントを設けて運用をしています。
それぞれのアカウントで目的やKPIが異なると思いますが、共通の目的はありますか?
南木氏:共通するのはコミュニティの育成ですね。もちろん、プロモーションとしての目的もありますが、フォロワー数だけでなく、エンゲージメントがとれるような運用をしています。また、投稿するだけでなく、運用結果の分析をして、それぞれのターゲットに届けられているかを評価しています。分析は、専用の分析ツールを使うこともあれば、フォロワーに利用者アンケートを実施して、アクティブなユーザーの属性を調べることもあります。
藤田氏:私が担当するMJでも、2023年にアンケート調査を実施してみました。ユーザー属性を調べて特徴を分析し、このまま同じ属性のユーザーを増やすのか、今集められていない層を集めるのか、プロジェクトのチームメンバーとも議論しながら方針を決めました。
アプリのユーザー層とフォロワーは属性が異なるのでしょうか?
藤田氏:異なりますね。MJは、アーケードゲームが20年前にスタート、アプリが約10年前からスタートしました。これまで公式としてコミュニティ活動促進をしていなかったので、2年前まではフォロワー数が約3万人にとどまっていて、ゲームのユーザー数と比べると圧倒的に数が少なく、公式のコミュニティがない状態でした。Xで発信しても情報がマッチしていないような感覚があり、フォロワーを増やすためのアプローチの手法は何がいいのかを検討するために、アンケートを実施しました。
南木氏:ゲームタイトルによって背景はさまざまです。MJはアーケードから始まっているので、わざわざ囲い込まなくても、ゲームセンターという文化の中でお店にコミュニティができていました。アプリになると店という求心力がなくなりますし、スマホアプリとしては、サブスクリプションの動画配信サービスなども競合となります。やはり、ゲームセンターに近いようなコミュニティが必要なので、それがXの役割になっています。
キャンペーンを多数実施。コアユーザーが参加する川柳を作成するキャンペーンでは、ユーザーの本音が見えた
キャンペーンを数多く実施されているということですが、どういう目的で実施していますか?
藤田氏:キャンペーンの目的は様々で、例えばゲームをローンチする前の人集めのため、ゲームが運用中でユーザーがすでにたくさんいる場合はユーザーからの口コミを増やすため、ゲームの愛着を強めるためなど、いろいろなパターンで実施しています。ローンチ前の人集めであればフォロワー数がKPIになりますし、口コミや愛着であればエンゲージメントをKPIにしています。
どういった種類のキャンペーンを実施していますか?
藤田氏:フォロワーが参加しやすいリポストキャンペーンの比率が高いですが、投稿型キャンペーンも実施しています。投稿型キャンペーンは、ゲームの画面を投稿してもらったり、外部のツールを使って投稿をしてもらうキャンペーンです。ツールを使って、すぐに当選結果がわかるインスタントウィンを実施することもあります。
外部のツールを使った投稿キャンペーンはどんなものですか?
藤田氏:MJでは、文字を入力できる画像とシステムを用意しておき、そこにユーザーが作成した川柳が表示される投稿キャンペーンを実施しました。ゲームの中身を知らないと参加できない分、コアユーザー層に多く参加してもらい、ファンが盛り上がってそれが多くの人に伝播していきました。川柳を見ると、私たちが気づかなかった要望があったり、プレイのあるあるネタだったりがあって、運営の参考になりました。お客様相談窓口に伝えるほどではないちょっとした要望は、川柳を通してなら伝えやすいのかなと思います。
キャンペーンのインセンティブはどんなものを用意していますか?
藤田氏:ゲームタイトルによって異なりますが、AmazonギフトカードやApple Gift Card、ゲーム内アイテムなどもありますし、ノベルティグッズ、販売しているグッズなど様々です。東京ゲームショウでのみ配布したグッズは、レアリティがあるので人気でした。
南木氏:「プロサッカークラブをつくろう!」(サカつく)シリーズのスマホアプリ「プロサッカークラブをつくろう!ロード・トゥ・ワールド」のキャンペーンでは、担当者が試行錯誤した結果、当落結果の通知をゲーム内の個別DMで配信しました。通常Xで完結するものが多いですが、あえてゲーム内にしたことで、アプリのインストール、起動を促しました。新規の方の場合は、インストールとチュートリアルを経ないと手に入らないですが、それを乗り越えて定着した方もいます。最近アプリを起動しない休眠顧客の掘り起こしの効果も高く、アプリのインストール数も数値が良かったです。
DMの一括送信のためにつぶやきデスクを導入。当選者の通知の業務効率化だけでなく、ストレス軽減効果も
2023年4月から、つぶやきデスクを導入いただきましたが、きっかけはありましたか?
藤田氏:Xの仕様変更により、利用していたツールが終了となり、DMの一括送信ができなくなってしまいました。各アカウントでキャンペーンを頻繁に開催しているため、対策が必要でした。すべてのキャンペーンを外部に委託すると費用がかさんでしまうので、DMの一括送信機能を持つツールはないかと探していたところ、つぶやきデスクを見つけました。
すでにキャンペーンのツールをお使いでしたし、他のツールでは難しかったのでしょうか?
藤田氏:ほとんどの場合、インスタントウィンや川柳を生成するキャンペーンツールは、スポットでの契約となり、継続的な利用はできません。弊社では、外部環境の変化に応じてキャンペーン予定を柔軟に変更するケースがあるので、契約をしてから利用するのでは間に合いません。スピーディーに対応するには、継続的に利用できるツールが必要でした。
つぶやきデスク以外にも、一括DM送信機能を備えたツールはありましたが、同時期に複数のキャンペーンを実施できなかったり、事前にキャンペーン登録が必要だったりと、制限がありました。運用しているアカウントが多いので、時期が重なることもありますし、臨機応変に企画を実施したかったので、条件に合いません。弊社の運用スタイルにマッチするのがつぶやきデスクでした。
Xの仕様変更によりDMの一斉配信が100件に制限されましたが、お困りではないですか?
藤田氏:キャンペーン1回あたりの当選者数は100名以下が多いですし、100名を超える場合は日を分けて配信しているので大きな問題ではないです。
DMの配信以外では、どのような機能を使っていますか?
藤田氏:ホーム画面でタイムラインや返信、RP、他のアカウントのツイート一覧などが一画面で見られるのが便利ですね。予約投稿機能も使用しています。予約投稿はメインで別のツールを使っていますが、投稿形式により制限があり投稿予約できないことがありましたが、つぶやきデスクでは希望する形式で投稿予約ができたので、つぶやきデスクを併用して利用するようになりました。
DM一括送信を使うようになって、どのような効果がありますか?
藤田氏:非常に効率化できています。当選通知には、ギフトカードの番号などユニーク情報を本文中に挿入しますが、CSVでユニーク情報のデータを用意すれば、一括送信できる点が便利です。10件程度なら、コピー&ペーストでできる範囲ではありますが、ミスを防ぐためにダブルチェック、トリプルチェックをしてもヒューマンエラーはどうしても発生します。元データの確認や送信できたかどうかを確認する手間はありますが、送信に関してはツールに任せられるので、精神的な負担が軽減されたと他のメンバーも言っておりました。
過去には、送信先と内容の組み合わせ間違い、ユニーク情報のコピー&ペーストのミスが発生しており、特にフォロワー数の多いアカウントの担当者は、ユーザーと直接やり取りをする手段のため、DM送信の作業はとても気を遣うので、その負担が軽減できていることが大きいです。
藤田さんは、メンバーにつぶやきデスクのトレーニングをされているということで、どのように実施していますか?
藤田氏:セクションメンバー全員向けに使い方をレクチャーしてから運用を開始し、運用する中で質問があれば個別に対応するようにしています。SNS運営経験の長いメンバーが多いので、使い方やツールの用語の理解などは早かったと思います。私が答えられない質問は、アユダンテのサポートに問い合わせをしていますが、いつも迅速に対応いただけて助かっています。
今後取り組んでいきたい施策はありますか?
南木氏:Xに限らず、Instagram、BlueSkyなどのプラットフォームにも、ゲームユーザーが集まっているようであれば、わたしたちも参入する必要があると思います。任意の異なるプラットフォームを一括で見られるツールがあると便利だなと思います。