角川アスキー総合研究所はKADOKAWAグループのメディア総研として、出版・メディア事業、リサーチ、コンサルティング、マーケティング、クリエイティブ開発などの事業を広く展開しています。
同社では、つぶやきデスクを2017年より活用しています。SNSの運用と関連事業について、中尾 文宏氏、井口 真莉奈氏のお二人にお話をうかがいました。
■Twitterの全量データを使ったツイート解析・リサーチサービスを提供
中尾さん、井口さん、それぞれの普段の業務内容を教えて下さい。
中尾:ビジネスクリエイション部は、角川アスキー総合研究所が提供するサービス・プロダクトなどを提案販売する、営業のような部署です。
弊社では、Twitter社より日本語の全量ツイートデータを購入しており、そのデータを活用したツイート解析・リサーチサービスも提供しています。
「ついラン」は、Twitterで話題になっているトレンドをランキングで発表していますが、これもツイートの全量データをテキストマイニングして、その結果を公開しています。
また弊社のツイート解析サービスは、様々なパートナー企業様とコラボさせて頂いております。最近では、テレビ局とコラボして、Twitterでの発言量の多いテレビ番組のランキングを発表していますが、こちらのランキングの元データを提供しています。
Twitterのツイート解析・リサーチサービスでは、今、話題のトレンドワードを知りたい、自社ブランド・競合アカウントのフォロワーのライフスタイル分析調査を行って、マーケティングに役立てたい、といったニーズにもお応えしています。
例えば、企業アカウントのフォロワーの属性レポート(性別・年齢・エリア)や、フォロワーの関心がある頻出キーワードのレポート、自社が取り巻くマーケット・競合アカウントのフォロー状況レポートなどを分析して、調査レポートとして提供しています。
井口:私の部署では、SNSやオウンドメディアの運用を行っています。自社アカウントの運用で得られた知見を元に、クライアント企業や地方自治体のSNSアカウント運用も行っています。
■運用、解析、広告運用が独立したチームとして機能
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角川アスキー総合研究所
ビジネスクリエイション部
ビジネスクリエイション課 兼 解析ビジネス課
中尾 文宏 氏 -
角川アスキー総合研究所
デジタルメディア部 ASCII課
井口 真莉奈 氏
中尾:弊社では、SNS関連サービスとして、アカウント運用、ツイート解析・リサーチ、広告運用の3つを提供していますが、それぞれ独立したチームユニットになっています。
一つのチームのメンバーは最大5人で、役割を特化して専門性を高め、スピーディーにサービス展開できるようにしています。
この体制になったのは2020年7月からですが、営業としては顧客のニーズに合わせて、横断的にサービスを提供できるようになりました。
というのも、広告運用ということでお問い合わせをいただいて訪問してお話を聞いてみると、「実は解析サービスが必要だった」、「アカウントの運用代行が必要だった」というケースがあるからです。
なお、5名以下の小さいチームにしたのは、コロナ禍によるリモートワーク環境でもスピーディーにコミュニケーションして業務を回せる人数だからです。
社内プロジェクトで培った知見を活かしながら、クライアント業務に対しても自ら手を動かして進めるという体制にしました。
なお、プロジェクトごとにリーダーがいて、リーダーの判断で、外部パートナーに協力してもらう、という場合もあります。
■キャンペーン参加者のデータも分析して、次の施策に活かす
自社アカウントだけでも、5種類運営されていますが、どのように運用されていますか?
現在運用中のアカウント
- ASCII.jp (@asciijpeditors)
- 週刊アスキー (@weeklyascii)
- ついラン・リアルタイムランキング中! (@tsuiranjp)
- ASCII STARTUP (@ooedostartup)
- アスキーストア (@ascii_store)
井口:ASCII.jp、週刊アスキーについては、中の人のペルソナを作って運用するというやり方ではなく、Webメディアでの記事が更新されたら、自動的に連動してツイートするようになっています。
フォロワーは、最新記事を知りたいのでその需要に応えるように配信しています。あと、記事のライターがコメントをつけて、記事を紹介することもあります。記事を書いた当人なので、記事の読みどころを端的にツイートしています。
ついランについては、解析チームが解析結果を記事としてオウンドメディアに投稿しているので、その内容をツイートしています。このアカウントでは、ユーザーにアンケート調査を実施することも多いです。
Twitterのキャンペーンも頻度高く実施しています。キャンペーンは目的が2つあります。
1つは週刊アスキーのプレゼント企画で、こちらは主に読者サービスとして行っています。
もう一つはハッシュタグをつけて実施しているキャンペーン。こちらは、キャンペーン参加者の属性解析調査を行うために開催しています。
#キャンペーンハッシュタグをツイートした人のアカウントを全量データから抽出して、キャンペーン参加者の属性、興味・関心などを解析します。
弊社に全量データがあるため、システム連携などの手間をかけさせることなく、対象ツイートを抽出して解析レポートを提示できるのが強みになっています。
■クライアントのSNS運用代行でつぶやきデスクを活用
他社の運用代行のアカウントはいかがでしょうか?
井口:現在10個ほどのアカウントの代行を行っており、その多くが中の人のペルソナを設定して、発信しています。
もともと企業のWEB制作などを受託していますが、SNSがコミュニケーションツールとして台頭するに連れて、運用のお悩みを相談いただくことが増え、それならば、と自社の知見を活かした運用代行を行うようになりました。
運用代行の場合、投稿前にクライアントの承認が必要なので、つぶやきデスクの承認機能を活用しています。
運用代行している企業の一つはセキュリティ関連企業のため、「炎上しない」ことがKPIになっていて、特に慎重に行っています。
セキュリティ関連企業の場合は、通常は1週間分くらいのツイートを私たちが作成し、予約投稿として設定しておき、クライアントに承認を依頼します。
クライアントも、つぶやきデスクで予約投稿の内容をチェックし、それで問題がなければ、そのまま予約投稿されます。予約投稿を設定すれば、クライアントの担当者に通知されるので、承認作業は非常にスムーズにできていて助かっています。
クライアントからの修正はほぼ発生しないのですが、発生したときも、すぐにつぶやきデスクから修正ができるので、便利です。
■一括DM配信、分析機能も便利に活用
他には、つぶやきデスクのどんな機能を活用されていますか?
井口:キャンペーン当選者の「一括DM配信」も便利です。
当選者のアカウントをCSVファイルでアップして、一斉に当選通知をできますし、配信時間も予約できるので、当選者にタイムラグなくお知らせできています。
通常20−50人くらいが当選するので、一括でお知らせできるのは、非常に効率的です。
キャンペーンでは、ハッシュタグを「検索フォルダ」で収集することもあります。期間を設定できるので、キャンペーン期間中にどのくらいハッシュタグがツイートされたか、拡散したかといったデータを取得しています。
また、つぶやきデスクのIDとパスワードがあれば、Twitterアカウントの操作ができるのも便利です。
TwitterアカウントのID、パスワードを知らせる必要がないので、アルバイトの方にも作業をお願いできますし、アカウントを間違えて投稿するリスクもありません。
クライアントには、定期レポートを作成してお渡ししています。つぶやきデスクの分析機能から、フォロワー数の推移、ツイートのRT、インプレッションなどの情報を抽出して、提出しています。
■キャンペーンに反応した属性を調査!反応する人にあわせて施策を変える
運用で悩むことはありますか?
井口:フォロワーが増えるほど、すべての人が満足するツイートはできない、というジレンマがありますね。
大多数には刺さっても、コアなファンに刺さらなかったらだめですし、逆に狙いたいターゲットにどうすれば届けられるか、ということは常に考えています。
キャンペーンをやって、男性のフォロワーが増えたけれど、女性のフォロワーがほしい、という時には、スイーツの投稿をするなど、女性が反応しやすい話題を投稿するなど工夫しています。
実際に、投稿内容を変えてみると、フォロワー属性に変動があったり、ツイートに「いいね!」、リツイートしてくれる人が変わるので、データを見ながら調整しています。
中尾:クライアントのキャンペーンで、特定のターゲットを狙ったのに属性解析をしてみたら、違う層が反応することがあります。その場合は、データを元に打ち出すキーワードやメッセージを変更することもあります。
例えば、「節約アプリ」で主婦層をターゲットと考えていたのに、キャンペーンで反応したのは大学生が多かったということがありました。節約=主婦と考えていましたが、Twitterでは仕送りやアルバイトで生活をやりくりしている学生のほうが高い関心を持っていたのです。
実際に大々的なプロモーションを行う前のトライアルとしてプレキャンペーンを実施して、誰が反応するのか、反応した人はどういうことに関心があるのか、といったことを分析することもあります。
好きなアニメ、タレントなどがわかればコラボをしかけることもあります。運用とツイート解析・リサーチサービスのセットで提供できるので、そうした踏み込んだ提案ができるのは強みですね。
■解析データをより活用していきたい
これから、どんなことに取り組んでいきたいですか?
中尾:解析ビジネスチームの取り組みは、これからさらにいろいろなことに応用できると考えています。例えば、フォロワー分析では、同じような業界、業種、サービスであっても、フォロワー=ブランドファンの特性に違いがあります。
競合と比較してフォロワー属性の違いを見つけて、その違いにあわせたプロモーションを展開するといったことができます。解析調査の結果をプロモーションや日々の運用に活かせるのは、一気通貫のサービスを提供しているアスキー総研ならではです。
また、ついランにはついランProというサービスもありまして、Twitterのトレンド入りキーワードを365日毎時間アーカイブしてツイートで反応した属性や関連語等、独自の付加価値データと組み合わせて、ダッシュボードで提供しています。
いつトレンドに入ったのか、どういった属性のユーザーがツイートしているのか、ポジティブ/ネガティブなのか、といった振り返りにも使えますし、1年前のクリスマスがいつからトレンド入りしたか、どんな#ハッシュタグが使われたか、といったデータから次の施策を考えるのにも役立ちます。
昨年の11月4日は「いい推しの日」で盛り上がったから今年は関連キャンペーンをしかけよう、ハロウィンと一緒につぶやかれている商品を調べてプレゼントにしよう、などデータを見ることで様々なアイデアが浮かびます。
メディアやメーカーの広報担当者など、キャンペーンや投稿内容に悩まれた時に、参考になるデータを提供できると思います。